設計業務の流れ(店舗ができるまで)05 – 家賃交渉 -
こんにちは。
東京を中心に住宅、店舗、商業施設などの設計業務を手がけている建築家の高山です。
目黒区祐天寺にあるヨガスタジオ・オハナスマイルさんのスタジオ完成までの道のりを、
設計業務に焦点をあてて私たち建築家や設計士の役割を紹介するこのコーナー、第5回目です。
店舗がオープンするまでの設計業務 05 (家賃交渉)
先方の不動産会社より建物本体の設計図を取り寄せ、さっそく内装デザインの基本図面の
作成に取りかかります。
想定の3部屋(スタジオ、エントランス、オフィス)が、ほぼ問題なくレイアウト
できることを確認し、スタジオは想定以上のMAX24人分のヨガマットが敷ける
ことを確認できました。
レイアウト検討図面スタジオプラン
内装仕上のデザインも、オハナスマイルさんとの打合せにより大まかな方針を
決定し、図面にイメージ写真などを貼り込んで行きます。
プロジェクト全体のスケジュール表も作成します。大家さんとの交渉時間など、
ある程度の余裕を持たせた状態で、2月中旬賃貸契約、4月末内装工事完了、
5月1日オープンというスケジュールが見えてきました。
必要書類・図面などを用意し、交渉に望む準備も完了です。
物件内見より1週間後、先方の不動産会社との顔合わせの日がやってきました。
当日は、オハナスマイルの社長、私、テナント側不動産会社のT氏、大家さん側の
不動産会社の4者で打合せを行いました。
プロジェクト全体のスケジュール表、内装工事の基本図面、仮申込書(希望家賃40万)、
オハナスマイルさんの会社概要と前期(1期目)の決算書などの書類を提出し、
挨拶と自己紹介、プロジェクトの詳細の説明などを行います。
先方の不動産会社には、提出資料を大家さんに渡していただき、その日の説明内容を
伝えていただいて、大家さんの反応を待つということで、その日の打合せは終了です。
大家さんからの反応が待ち遠しい日々がつづきます・・・。
が、数日後、先方の不動産屋さんからは思いもかけない内容の連絡が来ました。
どうやら大家さんは今回の賃貸契約に関しては断るという方向に考えが
傾いているようです。
えっ!?
事態がつかめないまま、こちら側はかなりの混乱状態です。
少し希望の家賃を低く設定しすぎたのか?など思い当たる部分もありますが、ともかく、
先方の不動産会社とアポイントを取り、情報を入手すべく再度打合せに向かいます。
詳しい話を聞いてみると、どうやら大家さんはオハナスマイルさんの事業の安定性と
いうものに不安を抱いているということのようです。
オハナスマイルさんの根幹の事業であるヨガとWEBというものになじみがないことも
原因であるようです。
たしかに、800万もの資金を提供するのと同じ訳ですから、会社自体の将来性が
問われるのも当然です。
ですが、そういった話であれば大きな問題ではありません。
むしろ、40万の希望家賃がネックになっているわけではないということで安心しました。
オハナスマイルさんは移転後のスタジオ運営、WEB事業などの展開に関してしっかりと
した事業計画を持っているわけですから、移転後の収支予測についても良好な結果を
残せることに相当固い自信を持っています。
それを大家さんにきっちりと説明する機会が得られれば、必ず信用してもらえるはずです。
なお、800万の初期費用負担という金額がどういった根拠で出てきたものなのかを
聞いてみたところ、以下のような内容であることが分かりました。
このテナントは完全スケルトン状態であるため、以前からなかなか入居希望者が現れない
という状態にあったようです。
そこで大家さんの負担で一般的な事務所仕様に整備するための内装工事を行い貸し事務所
として入居募集を行おうとしたことがあり、その時の見積書の金額が800万であった
とのことでした。
これは非常に重要な情報です。
この時の打合せによりオハナスマイルさんと私とでやるべきことは見えてきました。
まず、そのときの800万の見積書のコピーをいただき、内容の確認をします。
先方の不動産屋さんには、なんとか2週間ほどの時間をいただき、今回の賃貸契約に
関する申し込みを提案書というカタチで改めて提出させていただくことを約束して
その日の打合せを終了しました。
その日の夜、オハナスマイル社長と私、テナント側不動産会社のT氏とでいろいろと
戦略を練った上で、次のような資料を提出するということになりました。
- 次回提出資料 -
・オハナスマイル社長直筆の大家さんへの手紙
・オハナスマイルさんの事業計画書と収支予測
・会社のコンセプトと今後の事業展開を示す資料
・内装工事の基本設計図と工事費概算書
・万が一、オハナスマイルさんがテナントを撤退した後の、
事務所仕様への改装工事の基本図面と工事費の概算書
・事務所仕様に改装した場合の最終的な参考レイアウト図面
ストーリーとしてはこうです。
・オハナスマイルはきちんとした会社コンセプトに基づいて事業計画をたてており、
良好な収支予測を打ち立てている。
・祐天寺駅前という好立地である当テナントに長期間の入居を希望している。
・大家さんには総工費の2/3程度を負担していただきたい。
・今回の内装工事は、万が一のテナント撤退の場合を想定し、事務所仕様への改装工事が
少額で出来るようなレイアウトと内装デザインとする。
・またその場合の改装工事費は保証金の一部で十分まかなうことができる。
・最終的な事務所仕様は、当初の800万の見積りの仕様よりも、機能・デザイン両面に
おいてよりグレードの高いものを残すことができるため、800万の初期費用はどのような
場合であれ決して無駄にはならない。
このようなストーリー立てであれば、大家さんの負担するリスクはほとんどなく、貸し主、
テナント双方にとってメリットのある賃貸契約となるはずです。
とにかく大急ぎで必要資料を用意しなければ成りません。
内装工事の施工者も3社ほど候補に挙げ、概算書作成の協力を依頼します。
2週間後、無事に一通りの図面、資料、概算書を用意することが出来ました。
(実際は徹夜続きで私の方はくたくたでしたが・・・)
最終的な事務所仕様レイアウト図面
先方の不動産会社に出向き、提案書としてまとめた手紙と必要図面・書類を
大家さんへ渡していただくようお願いしてひとまず引き揚げました。
あとは大家さんの反応を待つばかりです。
また悶々とする日々がしばらく続きます・・・
- 設計業務の流れ(店舗の場合)06 へつづく -
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